気になる高気密高断熱住宅とカビの関係!一級建築士が語るホントの話

日本の住宅環境で、切っても切り離せない問題のひとつが「カビの発生」です。

カビは建物の寿命を縮めるだけでなく、アレルギー性鼻炎やシックハウス症候群など、住む人の健康にも深刻なダメージを与える事もあるため、防カビ対策や発生したカビの除去は重要な問題です。
そんな中でも「高気密高断熱住宅はカビやすい」という話を耳にすることはありませんか?

そこで、今回は「何故、高気密高断熱だとカビが発生しやすいと言われるのか?本当にそうなのか?」など、高気密高断熱住宅に暮らす上での注意点を交えながら、数々の高気密高断熱住宅を手がけてきた創建社 一級建築士の小泉がわかりやすく解説します。

 

住宅のカビはなぜ生えるのか?カビ発生のメカニズム

まずはじめに、カビは何故発生するのかについてお話ししておきましょう。
そもそもカビの元になる「カビ菌」は、あらゆる場所に存在し、空気中に浮遊しています。
これに「温度」「湿度(水分)」「栄養」「酸素」が加わると、カビが発生します。

温度

カビの発生温度は5~45℃と幅がありますが、20℃以上から活発になり、28℃前後が一番盛んになると言われています。

湿度

令和3年(2021年)度の都道府県別平均湿度を見てみると、トップは77%の岩手県・富山県・福井県・島根県・沖縄県。最下位の広島県でも62%で、全国平均は71%となっています。
※総務省 日本統計年鑑より抽出

カビは60%以上で発生し、80%以上になると繁殖のスピードが高まり、あっという間に広がっていきます。
湿度が高い日本では、北海道を除くほとんどの地域で「湿気」に悩まされている事でしょう。

栄養

カビの栄養源は、ホコリや汚れ、飛散した人間の垢や髪の毛のタンパク質、食品、また塗料などの建材が栄養になる場合もあります。
特にホコリは、カビの栄養源でもあり空気中の水分を抱え込む特性もあるため、カビが効率的に栄養を吸収して繁殖する格好の栄養です。
ホコリや髪の毛が溜まりやすい場所、食品のある場所はカビが生えやすく繁殖しやすいので、注意が必要です。

酸素

カビはただの汚れではなく、酸素を利用する代謝機構を備えた生きた菌です。
つまり、私たち人間と同じように、生きていく(繁殖する)ために「酸素」が必要です。
ですが暮らしの中で酸素をシャットアウトすることは不可能ですから、カビ発生の要因として取り除くことはできません。

 

高気密の家はカビが発生しやすいって本当?

「高気密住宅は湿気がこもってカビやすい」実は、建築家の私も最初はそう思っていました。

だって想像してみてください。
人間が気密性の高いビニールで包まれたらどうなるか?
あっという間に、結露するでしょう?
「気密性が高い」ということは、外気と内部の温度差が発生しやすいため結露が起こりやすい=十分な水分があるためカビが発生しやすいのです。

「カビ菌」は空気中に無数に存在するので、結露による水分があって、適度な温度の室内では、カビはどんどん繁殖します。
大昔の日本家屋(古民家)で、結露ができなかったのは、木造で極めて通気性が良い造り=気密性が低い構造だったからで、本来はこれが湿度の高い日本の風土に合った住まいだったのだと思います。
だからといって、生活環境や住宅事情が変化した現代で、昔のままの日本家屋に住むというのは現実的ではありません。

ここからは高気密住宅のメリットを生かしながら、カビの生えにくい環境を維持して「本当の意味で一年中快適に過ごせる家」を実現するためには何が必要かをご説明します。

 

結露を防ぐ鍵は断熱性能にあった

現在の住宅では、気密性×断熱性=高気密高断熱を謳っているものがほとんどです。
この「断熱」が結露を防ぐための重要なポイントになります。

断熱材があることで、冬なら外気が室内の壁に到達するまでに冷気が軽減され、その結果、屋内と壁内の温度差が縮まることで結露が防げます。
もちろん断熱性能や家の仕様によっても差がありますが、Com.ieで建てた我が家では、室内の温度22℃位の時に壁の表面温度が20℃程度なので、ほとんど差が無く結露はしません。

ここで、壁の中で結露が起こるのでは?という疑問が生まれてきますが、Com.ieでは、密度の高い断熱材と気密シートを採用して壁内に湿気が侵入するのをしっかり防いでいますので、壁の中で結露が起こることはありません。

高気密高断熱の家Com.ieの外壁断面図

とはいえ、必ずしも「高気密高断熱住宅」だから、どの家でも同じように結露しないというわけではありません。
気密性能・断熱性能の高さを謳っている住宅でも、その性能には差があり、窓や壁に結露が発生したり、知らないうちに壁内結露が起こったりするケースも少なくないので、十分に注意が必要です。

このように「高気密の家だからカビが生えやすい」のではなく、高気密住宅であっても断熱性能が低い場合、または十分でない場合に、結露が発生しやすくカビの温床になる可能性が極めて高いということなのです。

 

高気密住宅だからこそできる「湿度コントロール」

カビ発生の原因になる「カビ菌」は、あらゆる場所に存在し、空気中に浮遊していて、「温度」「湿度(水分)」「栄養」「酸素」によって発生〜繁殖することをお話ししました。
この中で、人が快適に暮らしながら、調整できる要素が「湿度」です。
湿気の原因にもなる「結露」については、前項でご説明しましたが、ここではさらに、高気密住宅における湿気のコントロールについてご説明します。

 

高気密住宅に欠かせない換気について

マンションなどの集合住宅のように、上下左右を部屋に囲まれて必然的に高気密になってしまっている空間では、結露が多く発生しカビが繁殖します。
では、単なる高気密空間と、創建社のCom.ieって何が違うのか?
それは換気の方法なんです。

Com.ieの換気は、吸気と排気を精密に機械で調節して、より良い換気環境を作る「第1種換気」という方法を採用しています。
窓を開ける換気とは異なり、外気中の汚れやカビ菌などを極力室内に入れずに、家中の空気をくまなく循環させて、快適性を確保しています。

除湿機能がある最新式の一種換気システム

なお、一般的な高気密高断熱の住宅で多く採用されているのは、第3種換気です。
第3種換気において、排気は機械で行いますが、吸気は吸気穴が開いているだけで自然な空気の流れに依存しています。

例えば皆さんの家で、台所の近くに吸気口の穴が開いていて、それを「寒いから」と閉めたりしていませんか?
そうすると、3種換気の場合には空気の流れが起こらなくなって、換気効率が著しく落ちてしまいます。
空気の流れが滞ることで、カビの栄養となるホコリや髪の毛などの汚れがたまりやすい状態になります。

 

高気密住宅ならエアコンと除湿器で湿気をコントロールできる

吸気と排気を精密に機械で調節する第一種換気で空気環境を整えても、室内には湿気が発生します。
浴室や料理の蒸気、人の体から蒸発する汗など、生活の中で発生する湿気はもちろん、夏場は玄関ドアや窓の開閉によって、外部の湿気が屋内に侵入してきます。

このような湿気は、除湿機でコントロールするのが効果的ですが、一般的な住宅では、外部から侵入する湿気量が多く、いくら除湿機を稼働させても、湿度が下がらないという問題があります。

一方、Com.ieでは、C値(相当すき間面積)が0.1~0.35㎠×㎡と低いため、外部からの湿気侵入量が抑えられます。
そのため、除湿機を適切に使用することで、カビの発生を抑えながら、夏でもサラッと快適な室内環境を保つことができます。

私の自邸(約160平米)では、5リッタータンクの大容量除湿機を2台設置していますが、夏場は1日に2回は水を流します。
つまり、1日合計20リットルの水が湿気として室内にあるということです。

大容量除湿機の5リッタータンク
5リッターの除湿器タンクでも半日でいっぱいになります

 

C値(相当すき間面積)が0.1~0.35㎠×㎡のCom.ieでも、1日にこれだけの湿気が採れるということは、一般の住宅では、どれほどの湿気が室内に侵入して溜まっているのか、容易に想像できると思います。

一般的な住宅では、いくら除湿機を稼働させても、それを上回る湿気が屋外からどんどん侵入してくるので、一向に湿度が下がらないのです。

 

高気密高断熱の家でもカビが発生することがある

高気密高断熱住宅だから、何もしなくても「カビが生えない」というわけではありません。

例えば、住宅の施工中の雨などで建材が湿気を含んだりすると、室内に湿気が溜まります。
また、引っ越しで運び込んだ荷物にも湿気が含まれているケースもあります。これらの湿気が、畳や壁などのカビの原因となります。

新築住宅は基礎や建築資材に水分が多く含んでいる為に、弊社の新築住宅でも入居から間もなく畳にカビが発生した事例がありました。
その家では、除湿機などによる湿度コントロールを行っていませんでした。
畳のカビを綺麗に取り除き、除湿機を置いて過剰な湿気を取り除いたところ、カビは再発しませんでした。

高気密高断熱住宅は、隙間がほとんどなく、外部環境に左右されにくいため、湿度がコントロールしやすいというメリットがあります。
しかし、湿気対策を怠ると、カビが発生する可能性があることを覚えておく必要があります。
しっかりと湿度をチェックして適切にコントロールすることで、いつでも快適で健康な暮らしができるのです。

 

まとめ

  • 「カビ菌」は、あらゆる場所に存在し、空気中に浮遊している。
  • カビ菌に「温度」「湿度(水分)」「栄養」「酸素」が加わるとカビが発生する
  • 気密性が高い空間では結露が起こりやすく、結露はカビの発生を高める。
  • 断熱性能を高めて、外気温度と室内温度の差を抑えれば、結露の発生が防げる。
  • 高気密高断熱住宅では、吸気と排気を精密に機械で調節する「一種換気」で、より良い換気環境を作ることができる。
  • 高気密高断熱の家で、しっかりと湿度をコントロールを行えば、カビのリスクは一般住宅よりはるかに低減できる。

 

今回は、高気密高断熱住宅とカビの関係について、ご説明してきました。
高気密住宅だからカビやすいというわけではなく、カビ発生のメカニズムをよく知った上で、適切な換気や除湿を行うことが重要だとお分かりいただけたでしょうか。

なお、最新式のCom.ieでは、自動除湿機能がある第一種換気を採用しています。
面倒な除湿器の水捨てからも解放され、湿度コントロールもできるので、今まで以上にカビを気にせずに暮らすことが可能になっています。

創建社では、最高に快適な暮らしのために、家との関わり方、暮らし方のご提案をしております。
性能を肌で感じる、実邸見学なども承っておりますので、お気軽にご相談ください。

まずは資料を見たい方は、お問い合わせフォームから。
お電話(045-593-1883)でのご相談も受け付けております。

創建社 代表取締役/一級建築士
小泉 充司

自宅の建て替えをきっかけに、自社オリジナルブランドの高気密高断熱住宅 Com.ie(コムイエ)を開発。自分自身がG3クラスの家に暮らすことで、その住み心地に絶対的な自信を持っています。住んでいるからこそわかる、高気密高断熱住宅の良い面も悪い面も正直にお伝えします。

 

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